美術作家 加藤苑 # EN KATO Art Works / ART WORKS⑤ 手の殻シリーズ

2005~2007年、2015年。 自己の認識に焦点を置いた作品。 過去の制作の中で最もコンセプチュアルなシリーズ。

今日、情報化社会や集団社会という日常生活の中で、人はどれだけ自己を意識することがあるだろうか。人の見解は多様でありながら、生と死・現実と理想・善と悪等、二元的な見方をすることが多い。そして、その相対する二つの概念に挟まれた、深いグレー・エリアを経験する。そこには混沌や矛盾が混在し、不安が生まれ、悩み、試行錯誤を繰り返す。
しかしこのグレー・エリアこそが二元の間に介在する一種の多様性なのであり、この状況の中で自己の思想や方向、生き方を探していく。

この状況にある現在の自己の位置を、作品を通して探り、確認していくことが出来たらと思う。それは、365日のうちの1日である今日の自己の行動を確認するものであったり、状況や感情の変化によって目に見えるものの変化を知り、その連続を意識することで自己を探っていくものであったり、又、情報や集団に埋もれ見失ってしまった自己の在り方を再び問うものであったする。

ここでは線描で描いた手形―中身の抜けた、手の殻が登場する。多数あるうちのどの位置の手形にでも、鑑賞者は自己をあてはめることが出来る。

“手”とは、手相や指紋等遺伝的な要素と、職業や生活による環境的な要素のどちらも顕著に現れ、顔同様“個”を特定出来る特別な部分である。その個性をあえて消去し、殻又は箱である手形は、個々が自由に出入り可能な“モノ”として画面上に存在する。

又“線”は、実際には存在せず面上に於いて実現可能なものであり、引く・描く行為自体による身体性と、作家の見解や感情・癖等がより明確に表れる場所でもあり、存在というテーマに適する1要素と考える。

素材は木製パネルに麻紙、岩絵具、アクリル絵具、雁皮紙、水晶末など。部分コラージュ作品が多い。
三分六サイズや120号、5m以上の作品など、大作が中心。
無数の手形は、コピーや版画ではなく、1つ1つ全て手描きである。


手の殻 -A / “Position” Series


“Position”Series Concept  ポジションシリーズ コンセプト


情報や集団に埋もれ見失ってしまった自己の在り方を探る事を目的とした作品。

人は人生のどこかで、グレー・エリアを経験する。そこにあるのは、混沌、無秩序、矛盾、不安。ここで葛藤し、さまよいながら、自分の位置と行く先を探す。

上下に配された二元に挟まれた、手形の集合がグレー・エリアである。自己の選択肢(手の殻)の形は様々で、無数にある。
人はこの手形から自分に合ったものを探し出し、そこに自己を当てはめる。違うと感じたら、また他のポジションを当てはめる。ここで気づくのは、人の多様な在り方なのである。
同時に、このかたまりは集団社会とも、交錯する大量の情報とも取ることが出来るだろう。全ては、個の集合によって出来ている。

ここでも線という要素に重点を置き、又、下地では画面を二分割し、生と死という意識下にある相対する二つの事柄を意味させた。ただしこれは、現実と理想、本能と理性のように、各々で自由に当てはめていただければ結構である。

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DSCF2967-b350.jpgPosition 〔Ⅰ〕  182.0×510.0 (cm)

DSCF2804-a.jpg    Position 〔Ⅰ〕 部分拡大
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参考作品:「 Position Ⅳ」  2006年  106.0× 62.0( cm )__.jpgPosition 〔Ⅳ〕

IMG_0362.JPGPosition 〔Ⅴ〕

DSC_0047-c-1.jpgPosition 〔Ⅲ〕

IMG_0373.JPG部分拡大

IMG_0367a.jpg部分拡大 部分拡大

DSCF2881-a.jpg個展風景

③work 2007-03.jpgwork 200703

IMG_0594_position365a.jpgPosition 365

DSCF2896b.jpgPosition 〔Ⅰ〕

DSCF2945-2-350dpi.jpgPosition 〔Ⅰ〕 部分

DSC_0016-d.jpgPosition 〔Ⅲ〕

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手の殻 -B /“Calendar”Series


“Calendar” Series Concept  カレンダーシリーズ コンセプト 

各作品に30個や31個、若しくは365個の手形を配し、365日のうちの1日である今日の自己の行動を確認する事を目的としたもの。

一年という一区切りの期間の中で、人はどれだけ自己というものを意識するだろうか。一日一日は、確実に死に向かって進んでいる。これが、生の状態である自己の現在と隣り合わせにあると考えることは少ない。

Calendar365:
画面全体を占める手形は、形の操作はしてあるものの、私自身の手首から指先までと同じ約17cmの長さで描いた。一見、機械によるコピーにも見えるこの手形は、全て手作業によるものである。その為、同じものはなく全てに微妙な差異があり、ここに芸術というものの価値を一つ置いた。薄い和紙に一つ一つ線を描き、画面に貼るという行為による身体性は、“つくる”人間の存在を感じさせる。
しかし、これはday artのように一人間の365日の軌跡として提示するのではなく、観る者が輪郭のみの手形を自己の一日と重ね合わせ、自己を確認していくことを目的としている。

透けて見える下地では画面を二分割し、生と死という意識下にある相対する二つの事柄を意味させた。ただしこれは、現実と理想、本能と理性のように、各々で自由に当てはめていただければ結構である。

Calendar-Month×12-:
Calendar365と同様のコンセプトだが、ここでは“手の殻”をそれぞれ30・31・28配したものを12枚に分けて制作し、これ全体で1つの作品とした。より平面的・デザイン的な画面とし、題名の通り「カレンダー」を作ったものである。

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DSC_0043-ab2.jpgCalendar 365 〔Ⅱ〕   194.0×194.0(cm)

DSCF3100-a.jpgCalendar 31

Cc.jpgCalendar 365 〔Ⅰ〕   194.0×194.0(cm)

DSCF2902-a.jpg部分

IMG_2784-b350.jpg部分

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②work 2006-12 350dpi.jpgwork 200612

IMG_0579sei-fu.1a.jpgsei-fu

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IMG_0387-a.jpgCalendar -Month×12-〔Ⅰ〕

▼Calendar -Month×12-〔Ⅰ〕 個々の作品
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IMG_0395-a.jpgCalendar -Month×12-〔Ⅰ〕

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IMG_0445.JPG個展「MAKE SURE」会場風景

▼Calendar -Month×12-〔Ⅱ〕 個々の作品
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2015-09-23 00.10.37a.jpgCalendar -Month×12-〔Ⅲ〕
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